学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からの相談に先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第204回のテーマは「学校行事を動画配信してほしい」。
新型コロナの影響
新型コロナウイルスは社会のさまざまな部分に影響を与えました。働き方などに大きな変化がありました。学校も社会の一部であり、もちろん変化がありました。そういった学校での変化の中で大きなものは「デジタル」への関わりです。学びにおいて「GIGA端末」が一般的になったことにより、学びの幅が大きく広がりました。個に応じた学びがとてもやりやすくなりました。また、学習以外の点でも良い変化がいくつもありました。たとえば、懇談会(保護者会)をオンラインで実施をすることで、参加可能な人が増えました。コロナの流行が学校のさまざまな部分に変化を与えています。
そういった変化の1つに「学校行事」があります。コロナの流行の初期、「三密を避ける」ことなどが求められました。そういったことと関連し、行事での子供のようすを動画配信する取組みが行われた学校が多かったです。これまでも技術的には動画配信などは可能でしたが、いくつかの不安要素があったことで実現されていませんでした。それが、コロナというショッキングな出来事の中で、学校において実現されていきました。
実際、「学芸会」や「運動会」などが動画配信されるようになりました。「運動会」の配信などは、学校にある機材で十分対応ができるものです。テレビのスポーツ中継ではないので、あまり精度の高いものではないかもしれませんが、動画配信をしていくことは可能でしょう。
動画配信のメリット・デメリット
動画配信をする「メリット」はいくつもあります。運動会の日に都合が悪く、見ることができなかった人が見ることのできるチャンスが増えたことなどです。これは懇談会などでもそうなのですが、親が仕事場などで見ている(参加している)ということもできます。また、遠隔地に住む祖父母などが見ることも可能でしょう。なかなか普段見ることができない孫の姿をオンラインの動画配信で見ることができる場合もあります。
ただ、「デメリット」もあります。セキュリティなどに関することです。ネットの世界は、良い意味でも悪い意味でも世界に開かれています。悪い形で使われてしまうと、いろいろな問題が生じてきます。東京都教育委員会は「学びのアップデート 第24号」というものの中で、「運動会のダンス動画を、運動会に来ることができない保護者にも見せるには」というタイトルで解説をしています。「リアルタイム配信」と「オンデマンド配信」のそれぞれの場合に注意すべきことをまとめています。その中には、配信に関して「保護者の同意を得ること」「ID、パスワードなどを必ず設定すること」「オンデマンドの場合はダウンロード禁止の権限設定をする」などが書かれています。
アフターコロナで何が最善なのか考えていく
先ほども触れたように、社会全体がオンラインでできることが増えてきています。学校のさまざまな取組みを上手にオンラインの技術を使いながら、良いものにしていくことができればと思います。ただ、私が少し気になっているのが、コロナの流行が落ち着いてきたことで、色々な取組みコロナ前の状況に戻っていることです。良いものもあります。たとえば、給食時の机の形は全員が前を向いたものよりも、数人のグループの形で食べる方が良いです。また、密に関わりながら遊ぶことができるようになったことも歓迎すべきことだと思います。しかし、良い取組みだったと思われるものまで、それを取りやめる必要はないと思います。今回のテーマである学校行事の動画配信などもそういったものの1つです。オンラインでの手段を残しておくことで、利益を享受できる人が一定数います。メインを対面の形としながらも、サブとしてオンラインの形を残しておくような形が望ましいのだと思います。アフターコロナの状況において何が最善なのかを考えていくことが大切なのでしょう。
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【相談対応Q&A】学校行事を動画配信してほしい
公開日時:2024-11-15 19:45:04
カテゴリ:事例/その他