学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からの相談に先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第201回のテーマは「登校班で困っている」。
登校班のメリット・デメリット
小学校への通学は「登校班」と「個別」の2つのやり方があります。地域の実情(歩道の状況など)によって決められることが多いようです。私は3つの小学校に勤めていたのですが、2つは「個別」登校で、1つは「登校班」登校でした。どちらも良い点、悪い点があるのですが、近年、登校班の難しさが話題になることがあります。
登校班の仕組みは、低学年の子供や親にとってはありがたい仕組みです。小学校入学後の6歳児、7歳児は交通事故の発生数も多く、親として心配です。高学年がリーダーとなり、連れて行ってくれることは安心ができます。逆に高学年の子供や親にとっては負担となることもあります。班長や副班長でまとめる役を担当することも多く、低学年の子供がきちんと歩かないことをケアしたり、集合時間に間に合わない子供へ対応したりなどです。このように立場によって「登校班」に対する印象は随分と違ってきます。
登校班の運営が困難に
近年、こういったこととは少し違った意味で登校班の難しさが話題になっています。「個人情報の扱い」に関してです。登校班のある学校では、2月3月などに次年度の登校班の編成を行う必要があります。6年生が抜け、新たに1年生が入ってきます。こういった登校班の編成はPTAが担当していることが多いです。私が勤めていた公立小学校でもPTAの校外委員会という部署が担当していました。多くの学校が似たような形で取り組まれているようです。
先日、「保護者全員に謝罪…名古屋の小学校4校が新1年生の個人情報をPTA側に無断提供 分団登校の班編成に」という記事がありました。新入生の情報を学校が勝手にPTAに提供したことが問題とされています。現在は「個人情報の保護に関する法律」というものがあります。この法律は、学校やPTAも関係してきます。この記事のケースでは、適切な手続きを取らずにPTAの担当者に学校が新1年生の情報を提供してしまったということです。このケースでの適切な手続きとは「入学者説明会において、書面または口頭で登校班編成に関する情報(住所)を提供するということを伝える」ことでしょう。今後はこういった手続きが必須になってくるのでしょう。
また、今回の問題とは少し違った問題が生じる可能性もあります。最近、PTAへの加入が義務でなくなったり、PTA自体がなくなったりしている学校もあります。そういったことと関連し、「PTAには加入していないのに、登校班で登校するのか」「PTAに加入していないのに、PTAの役員がその子供の班編成などをするのか」という問題です。
学校まで子供を安全に通わせるということは法律では「保護者の責任」となっています。個別での登校の学校であれば、PTAの加入と通学の関係で問題は生じません。しかし、登校班の仕組みのある学校の場合、先ほども書いたようにPTAの人が担当している「班編成」や「旗振り当番」との関係で問題が生じてくる場合があります。面倒なことは嫌だからPTAには加入していない家庭(子供、保護者)が、PTAが対応している「子供が安全に通う」というメリットを受けているのはおかしいのではないかというものです。
「個人情報の保護」という新しい考え方が出てきたことにより、それまで当たり前だったこと(新入生の情報を伝えること)を変えていく必要が出てきたことになります。このことだけでなく、新しい考え方が出ることにより、それまでの考え方を変えていくことがあります。その時代に合ったものはどういったことなのかを考えていくことが必要なのでしょう。こういった変化を適切にしていくことが健全な組織でいるためには必要なのだと思います。
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【相談対応Q&A】登校班で困っている
公開日時:2024-10-25 19:45:03
カテゴリ:事例/その他