学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からのクレームに先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第199回のテーマは「先生の指導が原因で不登校になった」。
不登校の原因は複数のものが重なり合っている
不登校者数が増えてきていることもあり、不登校に関する知見が増えてきています。不登校の原因は1つではなく、複数のものが重なり合っていると考えるのが一般的です。ただ、教師に原因があることも多いのも事実です。
文科省は、不登校の定義を次のように示しています。
「何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、投稿しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いたもの」
不登校の理由に認識のズレ
不登校の原因を探るための調査などが行われています。そういったものでは、学校・教師の認識と子ども・保護者の認識の両者のズレが大きいものとなっています。
不登校の理由について学校(教師)がアンケートに答えているものの場合、約半数が「無気力、不安」を原因としてあげています。調査年度や調査主体などが変わっても、こういった傾向はあまり変わりません。しかし、同じ質問に関して、子供や保護者が答えた場合、かなり状況が違ってきます。ある民間機関による調査で、不登校の原因を子ども本人に聞いたところ(重複回答あり)、「いじめを含む人間関係」が1/2、「勉強がわからない」が1/3、「生活のリズムの乱れ」が1/3、「先生との関係」が1/4となっています。
両者に認識のズレがあるのがわかります。特に「先生との関係」を主原因としているとする割合は子供が答えた場合は約1/4(25%)なのですが、教師が答えた場合は3%でしかなかったという結果もあります。教師本人に原因を聞いた際、自分が原因であると感じていたとしても答えにくいのだと思います。また、自分が原因であるということを教師自身が認識していないということもあり得ます。
教師自身の取組みに関して客観的に見ることが大事
教師はどんなに良い実践をしたとしても、それがすべての子供に良い影響を与えている訳ではないということを常に意識しておく必要があるのだと思います。クラスのほとんどの子供にとっては良い学び、刺激となった取組みでも、ある子供にとっては辛く、苦しく、それが原因で学校に行きたくなくなるということも起こり得るということです。現在は、社会が多様になり、子供も家庭も多様になっています。受け手が多様になっていることで、教師が良いことと思って取り組んでも、結果としてそうならない場合があります。従来のやり方がマイナスに働いてしまうこともあるのだと思います。
これはどんなに優れた教師でも当てはまることでしょう。だからこそ教師は学び続けていく必要があるのでしょう。私自身、大学の教員として、現職教育の場に行くことがあります。これまで自分が経験したことや研究してきたことなどを伝えています。そういった中で多くの現場の先生の学びになることを伝えようと、最新の理論なども学ぶようにしています。そういった努力をしたとしても、私が伝えたことがすべての現場でうまく活用できる訳ではありません。学校の状況が違ったり、子供の状況が違ったりすれば、他の状況でとても良かった取組みも、そうとはならないこともあるからです。常にそういったことを意識したうえで私は関わるようにしています。教師が自分の取組みに関して、少しだけでも客観的に見ることができるようになったら、子供との関わりに良い影響を与えていくのだと思います。そういったことが不登校を減らすことにもつながっていくのだと思います。
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【クレーム対応Q&A】先生の指導が原因で不登校に
公開日時:2024-10-11 19:45:04
カテゴリ:事例/その他