学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からのクレームに先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第198回のテーマは「先生が勉強不足・指導力不足ではないか」。
教員採用試験の倍率低下
全国で教員採用試験の合格発表がされています。いくつもの自治体で低い倍率となっています。たとえば、東京都の2025年度採用は小学校1.2倍、小中共通1.4倍、全体平均1.7倍で2年連続して2.0倍を下回ったと発表されています。他の自治体でも似たようなケースが多数見られています。秋に2回目の採用試験を実施する自治体もあります。そういった状況は親も知っているところであり、学級でうまくいかないことがあった際、「先生が勉強不足なのではないか?」「指導力不足なのではないか?」という意見を学校に伝えていくことがあります。
今回のテーマに関しては、各学校で対応のできる部分とできない部分があります。教員の増員や配置などに関することは、各学校ではなく、自治体や文科省・財務省などが関係してくることだからです。それなので整理して考えていくことが良いでしょう。
各学校で取り組めること
まず、各学校で取り組むことができることです。さまざまな業務改善を行い、教師が学ぶ時間を作っていくことが大切でしょう。教育基本法第9条では「法律に定める学校の教員は、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない」とあります。
新型コロナウイルスの流行によって、それまで取り組まれていたもので無くなったものがいくつもありました。それをそのまま復活させるのか、本当に必要なのかを吟味し、場合によっては復活させないのかということを考えていくと良いです。現在の学校が危機的状況だということを踏まえ、そういった視点で学校のさまざまな業務を改めて見直していくのです。そうやって削っていくことで、本来は大事である教師が学ぶ時間を確保していくことにつながります。学ぶのは若い先生(新採用など)だけではありません。社会状況が変化し、学びの場もその影響を多分に受ける中、これまでのやり方だけでなく、違ったやり方がたくさん学校現場に入ってきています。GIGAスクール構想などのその特徴的なものです。どの年代においても教師は学ぶことが大切であり、それが直接的、間接的に子供達へ良い影響を与えていくことになります。
現状をきちんと伝えることが大事
次にそれぞれの学校だけの対応では問題が改善されないものについてです。これは市区町村教委、都道府県教委、文科省・財務省などが関係してくるものです。予算が関わってくるものが多くなります。これに関しては学校の教員は現状をきちんと伝えていくことが必要になるでしょう。勤務時間を正確に記録し、持ち帰りの仕事についても把握するようにし、それらを適切な方法で学校外の人へ伝えていくことなどです。可能な限りマスコミなどに情報を提供していくことも良いでしょう。そういった自分たちの仕事環境を社会に開示していくことで改善につながっていく可能性が出てきます。
また、昨今の教採の状況を考えると、養成機関の役割にも変化が生じてきます。私が属している教員を養成する大学などの重要度が増してきています。これまでは教採はそれなりの倍率があったことで、教員志望者をふるいにかける役割となっていました。少し課題のある人が試験で合格できない形でした。現状、倍率が低くなってきたことで教採がそういった役割を果たしにくくなっています。これまで以上に大学では現場で役に立つ実践的な学びに取り組み、免許取得者が卒業後、すぐにしっかりと働くことができるような状況を作っていく必要があります。
現在の学校の状況は色々な点で問題を抱えています。関係するいくつもの機関が今の時代にあった形で取り組み、教員が質の高い学びのできる形となっていくことが望まれます。
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【クレーム対応Q&A】先生が勉強・指導力不足
公開日時:2024-10-04 19:45:03
カテゴリ:事例/その他