学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からのクレームに先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第197回のテーマは「皆勤賞をなくしてほしい」。
皆勤賞の扱いに変化
皆勤賞は良いことが認められる仕組みです。頑張って学校に毎日通ったことが認められます。その事自体は良いことなのですが、社会状況の変化などもある中で、これまでのままの皆勤賞で良いのであろうかということが議論になっています。
近年、皆勤賞が話題になったのは、新型コロナウイルスの流行時です。未知の病気であったこともあり、学校や家庭での対応が混乱しました。学校からは少しでも熱が出るようであれば欠席するように家庭に依頼しました。家庭では、家族に病弱な人がいる家庭などでは感染への不安から子供が元気であっても学校に通わせなかったというケースもありました。また、オンラインで授業を行うケースも増え、「出席」「欠席」「出席停止」などの線引きが少し曖昧になった時期があります。そういった中で皆勤賞の扱いをどのようにしたら良いのかということが話題となりました。
愛知県では「ラーケーション」という取り組みをスタートさせています。これは、一定日数(年間で3日まで)を休んでも学校の欠席としないというものです。愛知県のホームページには次のように書かれています。
「愛知県全体の「休み方改革」プロジェクトの中で生まれた「ラーケーションの日」は、子供が保護者等とともに、平日に、校外(家庭や地域)で、体験や探究の学び・活動を、自ら考え、企画し、実行することができる日です。校外での自主学習活動であるため、子供は学校に登校しなくても欠席とはならず、「出席停止・忌引等」と同じ扱いとなります。保護者等の休暇に合わせて届け出て、年に3日まで取ることができます。」
学校に通うことが絶対なのではないという意識が広まりつつあります。
出欠記録の廃止の動き
高校入試の内申書の出欠記録の廃止の動きがあります。すでに東京都、神奈川県、大阪府、奈良県、広島県などの都府県でそのようになっています。岐阜県は2025年の入試から欠席の記録欄を廃止することを発表しています。その発表では「家族の介護といった家庭の事情や体調などで欠席せざるを得ない生徒が不利になることがないよう、来年度の公立高校の入試から廃止することを決めました」とあります。
今回のテーマは「学校には行かなければならないもの」という日本の社会において従来から考えられていたものが変化し始めていることと関わりがあるでしょう。学校に「行かなければならない」ということが、「不登校の子供への圧力」となっている面があります。現在は、学校とは違った居場所(フリースクールなど)も増えてきています。また、仕事においては体や心を壊すまで仕事に行くようなことが起こってしまっています。近年、公立学校の教員でうつ病などの精神疾患で休職した人は年間で6,000人以上になっています。他の職種以上に教員は真面目な人が多く、自分の体や心を壊すまで働き続けてしまうという状況があります。体や心を壊してまで学校へ行ったり、職場へ行ったりしなくとも良いのではという考え方が「皆勤賞を無くしても良いのでは」という考えにつながっています。皆勤賞については、あっても、なくても良いものでしょう。昨今の社会状況や学校の置かれた状況を踏まえ、各学校で判断していけば良いものでしょう。
本企画では、読者の皆さまからの質問を受け付けています。下記のボタンをクリックして表示されるフォームより送信ください。実際に学校へ寄せられた相談のほか、保護者が学校へ伝えた相談など、鈴木先生に対応方法を聞いてみたい相談事例を募集します。
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【相談対応Q&A】皆勤賞をなくしてほしい
公開日時:2024-09-27 19:45:03
カテゴリ:事例/その他